『殺人狂時代』
高松東宝さよならイベント上映作品、て事で、またもや自宅で寂しく鑑賞。『殺人狂時代』と言えば一般的には、喜劇王チャールズ・チャップリンの同名作品が有名でしょうけど、こちらは昭和42年に封切られた東宝作品。監督は岡本喜八。…なんか、今年は異様に岡本映画を観てる気がするな(^_^;)、この四式での登板も、多分多いよ。
元ナチスはゲシュタポのドイツ人が、かつての仲間である溝呂木博士の元を尋ねてくる。精神病院を営みながら、影では素質のある患者を殺し屋として育て、大日本人口調節審議会なる組織のリーダーとしても活動する溝呂木。ドイツ人のおっさんは、溝呂木に大きな仕事頼みたいが、その前に殺し屋の腕前をテストさせてくれと言う。電話帳から無作為に選び出された三人の一般市民を三日以内に殺して連れてこい…。果たして溝呂木配下の殺し屋は、二人の標的を始末した。が、残る一人、もっとも与し易いと思われた桔梗信治は、偶然ながら殺し屋を撃退してしまう。桔梗信治が標的とされたのが偶然では無く、その理由を知った溝呂木は、殺し屋を次々と差し向けるが…
てな感じの物語。ネタがネタだけに狂った作品です(笑)。精神病患者の描写が、かなり本気だったり(^_^;)、そのセンスが逝っちゃってて(^_^;)、恐らく地上波放送なんて無理、な作品。かつて、WOWOWで放送された時も、音声途切れまくりでしたし(^_^;)。ついでにこの映画、内容に頭抱えた東宝が、半年間お蔵入り指定にしたと言う伝説も残してます。ただ、その後の名画座等の上映にて異様に人気を得て、カルト映画としての地位を得た、と。
実際、この映画、無茶無茶面白いんですよね。溝呂木を演ずる天本英世は、本作と同年に公開された『キングコングの逆襲』でも、ドクター・フーと言う悪の科学者の鏡(笑)の様な役を演じてますが、溝呂木博士もこれに勝るとも劣らない、いや、狂気性ではおそらく、後の死神博士をも凌駕するであろう(^_^;)怪演を見せております。面白いことに、ドクター・フーも溝呂木博士も「わしもドクター・フーだ!」「わしも溝呂木省吾だ!」(しょうご、の漢字は自信無し(^_^;))と、自身のプライドを前面に押し出した台詞を吐いていたり、その類似性を比べるのもまた一興(^_^;)。…ついでにキン逆も観るかしら(^_^;)
桔梗を演ずる仲代達矢もまた、素晴らしい。最初は無精ひげにビン底メガネな冴えない心理学者として登場、とぼけた演技が炸裂(^_^;)するんだけど、そんなキャラが推理の冴えを見せて殺し屋を反対に倒していくと言う、痛快性も持ち合わせております。このキャラクター、例えるなら…って、もうこの例えも過去のものになった感じであるが(^_^;)『機動警察パトレイバー』の後藤隊長を更に腑抜けにしたような(笑)キャラだったり。てゆーか、確か後藤隊長のモデルがコレだった様な記憶もあるし。しっかり、水虫も掻いてるしね(笑)
他、脇を固める俳優陣の熱演とか、低予算らしいんだけど今回の高松東宝さよならイベント上映作品の中では恐らく最大の迫力を誇る発破シーンもあったり、見所満載の映画なのですよコレが。未見の方は、是非、万難を排して観て頂きたい(昔はビデオも出ていたしね)
余談。あえてこの映画の欠点を挙げるなら。もっともインパクトのある殺し屋小川安三が、最初に片付けられちゃう事だな(笑)。実に惜しい(^_^;)
余談2。まぁ、この映画を観に行く様な人にはわかんない例え。今回鑑賞して、『みつめてナイト』ライズシナリオに感じたデジャブーはこれか(笑)と気づいた(^_^;)
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